新型コロナウィルスの企業対応【前編 理解度チェック】

2020年03月04日(水)
北海道では、全国でも最も新型コロナウィルスの感染者が多く、今後も感染拡大が懸念されており、全道の小中学校は基本的に2月27日から、札幌市内は2月28日から休校措置がとられています。また政府も3月2日から春休みまで、全国の小中高の授業を休講とするよう要請を出しており、子供をもつ保護者(経営者、従業員)にとっては、取引先との関係をどうしたらよいか、働き方の変更が必要か、賃金支給はどうしたよいかなど、疑問や不安を感じておられる方も少なくないと思います。

そこで、以下では簡単ではありますが、法的なリスクマネジメントという観点から、新型コロナウィルスの企業対応についてQ&Aを策定しましたので、参考にして頂ければと存じます。
もっとも、以下で記載した考え方は現在の法律に照らし合わせたものとなるため、事業者(会社)にとっては、営業的にも財政的にも厳しい対応となります。そのためにも事業者(会社)を財政的に支援する特別措置法の成立と十分な予算措置が望まれるところです。


第1章 理解度チェック
(参考文献:中野明安「もうひとつの新型インフルエンザ対策」(第一法規、2010年)より、理解度チェック10問をもとに改変しました)

新型コロナウィルス対策に関しての理解度を、次の10の質問に、〇か、×かで答える形で検証してみてください。判断に迷う質問については△としてください。



[解答]
問①:×
新型コロナウィルスについては、現段階では、ワクチンもなく、治療薬も確立されていませんので季節性のインフルエンザと同一に考えることはできません。様々な報道がなされ、政府ですら対応に苦慮しているようですので、従業員も内心不安になっている方も多いでしょう。従業員に対して安心して就業してもらい、会社としても自信をもって就業を指示するために、感染危機を想定した上で、早目に対策を策定する必要があります。

問②:×
確かに、一般的な感染予防措置をとっており、現在のようにマスクがどこにいっても入手困難な中で、従業員にマスクを配布しているというのは素晴らしいと思います。しかし、法的な観点から安全配慮義務(健康配慮義務)を尽くしたといえるためには、これらの感染予防措置を実際に徹底できているかについて管理し、教育指導する必要があります。
特に、新型コロナウィルス対策としては、マスクのほか、手指の消毒、うがいの励行が効果的との報道もありますので、それらが具体的に実施できているかをチェックし、日々、周知していくことが必要です。また、マスクが入手困難でも、最低限の咳エチケット[咳をする場合、ハンカチなどで口を覆うなど]を指導しておく必要があるでしょう。

問③:×
特定の部署が中心となるのは当然ではありますが、問題は事業継続そのものに関わる損失危険管理体制に及びます。代表取締役等を本部長とする対策本部の設置など[少人数の企業では代表取締役と幹部職員の会議という形で構いません]を検討し、事業体制をどうするかについて協議する必要があります。

問④:×
広報等については、時期、症状の程度、社会的影響などを考慮すると、どうすべきか悩ましいと感じるところもあると思いますが、現在、国を挙げて感染拡大防止に取り組んでいますので情報隠蔽に対しては、社会的にも強く非難され、法的にも大きな問題を引き起こすことにつながります。したがって正確な情報をいち早く収集して、公表し、十分な対応を行っていることを説明することが必要です。もっとも誤った風評流布等の弊害も考慮に入れて、これを乗り越えるための体制や対策が出来ているかも検討の上で判断していく必要があるという点には留意してください。

問⑤:×
国の要請に応じるというだけで、取引上の義務が免責されたり、従業員との関係で従業員を休ませたことによる賃金保障[特に労働基準法26条の休業保障【平均賃金の60%保障】]が不要になるわけではありません。国からの要請は一つの判断材料ではありますので、事業継続や休止については我々顧問弁護士や問題となっているテーマに応じて、必要な分野の専門家を交えて協議を尽くして判断することとお考えください。

問⑥:×
基本的には問④と同様の考え方になりますので、企業秘密にかかわる部分を除き、積極的に公表し、会社の対応方法について説明を行い、理解を求めることが重要です。

問⑦:〇
ただでさえ、人手が不足しているのだから、軽症で本人が同意していれば良いのではと考える方がいるかもしれません。しかし、出勤をお願いした従業員に対する安全配慮や健康配慮だけではなく、他の従業員や当該従業員と接触する可能性のある第三者との関係を考えるならば、やはり感染拡大防止義務を優先しなければならないことはご理解いただけると思います。
医師(現状では、国)に許可されるまで就業させるべきではありません。北海道の感染拡大状況や多様な地域や年齢層に感染が確認されていることからすると、早期に取引先との納期に関する再交渉、協力会社からの支援等、必要な対策を講じておく必要があります。

問⑧:×
法的リスクは単に法人自体にとどまらず、担当者【従業員】自身の責任も問題となりえます。また感染症対策は従業員一人ひとりの危機意識が強固な防衛線を支えることになりますので、会社を守り、従業員自身が自分を守るためにも自分事として捉えて行動する必要があります。

問⑨:△
突然の事業休止ということでは、利用客、消費者や取引先から危機管理に対する対応不足を非難される可能性があります。
約款への免責特約もさることながら、事前に十分な説明と理解を求める行動が必要とされます。また、現時点で新型コロナウィルスの感染予防の観点からの事業休止や債務不履行について損害保険【使用者賠償保険】が適用されるかは不透明【むしろ適用外とされる可能性が高い】ですので、その点についての情報は、保険会社や代理店担当者などに問い合わせるなどして十分収集しておくべきでしょう。 

問⑩:〇
会社が従業員に対して安全配慮義務(健康配慮義務)を尽くした、さらに取引先、利用客、消費者に対して善管注意義務(善良な管理者としての義務)を尽くしたといえるには、正確な情報を入手し、意思決定がプロセスも含めて合理的であるということが重要です。
そのため、まだ新型コロナウィルスの感染拡大が、企業活動や地域社会の活動そのものを崩壊させるような状況に至る前の段階で、必要な準備が何かを検討し、対策を講じておくことが重要です。感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律【感染症予防法】では(国民の責務)として次のように規定しています。
「第四条 国民は、感染症に関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うよう努めるとともに、感染症の患者等の人権が損なわれることがないようにしなければならない。」
ここにいう国民には法人【企業】も含まれますので、正しい知識のもとに予防のために必要な注意を払い、患者等の人権を侵害しない対策が求められています。


中編・後編では、新型コロナウィルスの企業対応についてQ&A形式でご案内します。


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監修:淺野高宏(ユナイテッド・コモンズ法律事務所 代表弁護士)