GAP認証取得までの道のり【穀物編 前編】

2019年08月14日(水)
 GAP取得に興味をお持ちの方の中には、「GAP認証取得したいけど、実際にどう進めれば良いのだろう?」、「GAPに関心はあるが、周囲に詳しい人がいない、Webで調べようと思っても事例をまとめているサイトは少ない」という悩みを持つ方も多いかと思います。そこで、今回は筆者が指導員としてJGAP認証取得支援を実施した農場の事例を紹介します!

 今回、JGAP認証を取得したのは、北海道美唄市で米農家をしている佐々木農場(佐々木さん・写真左)、田中農園(田中さん・写真右)です。

佐々木農場:「米・小麦・大豆」
田中農園 :「米」
上記の対象品目で認証を取得しました。


実際のところGAPとはどんなもの?



※1農林水産省 農業生産工程管理(GAP)について 平成27年4月

 お二人と初めてお会いした時に出てきた言葉が「GAPって何から始めれば良いの?」でした。同じ悩みを抱えている人も少なくないと思います。
 そもそもGAP認証取得することにより「販売量が増える」「高く売れる」など付加価値を求めている方は、一度そのイメージを改める必要があるかもしれません。確かに海外出荷する際に、国際認証であるGLOBAL GAPを取得していて国内よりも高価格で出荷できる場合には付加価値としてGAPが役立つこともあります。
 しかし、根本的な考え方としてGAPとは「農業において、食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取組。」このように捉えていただければと思います。
 農産物は洗って、調理するのが前提なので加工品に比べて安全・衛生面での基準が設定されていませんでした。しかし、国際的に農産物に対する管理基準を設ける動きが活発化し、GAPのような管理基準が誕生した経緯があります。近年、大手スーパーなどで納品物に対してGAP取得を要求している所が出てきていますし、東京オリンピックでも同様の条件が付いています。まだまだ、認知度としては低いですが、今後注目が高まっていくのは必然的な流れだと感じています。

工程管理の基本は5Sから!


「5S」のテンプレートはテンプレート畑からダウンロードが可能。


整理・整頓された農器具庫

 佐々木さんと田中さんが初めに取組んだのが5Sです。5Sとは【整理・整頓・清掃・清潔・習慣化】のそれぞれのローマ字の頭文字Sを取ったものです。安全・衛生を徹底するための基本は5Sを実施することからと言えます。まず、お二人は倉庫内の不要物を捨て、散らばっていた農機具や資材の置場を決めて定位置管理を進めました。

5Sを実施することで
・モノを探す手間が省ける
・躓いたり引っかけたりする怪我を防げる
・生産物に異物混入するリスクを軽減できる など
様々なメリットが生まれます。

 筆者も過去に食品工場で品質管理業務を担当していましたが、一度整理・整頓された現場にすると、ちょっとした汚れが気になり、定位置に器具が無いと違和感を感じるようになります。経験上、整理・整頓された環境を維持できるようになると、作業効率や生産効率が向上してきます。今までのやり方を変えていくことになるので大変な作業ですが、重要な取り組みです。

難関の帳票類作成



 次に取り組まなければならないのが、帳票類の作成です。日々の作業記録は、手帳や日記などにつけている生産者の方も多いと思いますが、GAPでは農薬や肥料の選定理由や使用記録、収穫記録、出荷記録など様々な書類作成が必要となります。
 「何故こんな面倒くさいことをしなければいけないのか。」そう感じる方も多いかもしれませんが、ヒトの口に入るモノをつくることは、それだけの責任が発生するからです。自分が消費者の立場になって考えると、野菜や肉を買うときに一番重要なポイントはなんでしょうか?「安全・安心」これが一番ではないでしょうか。
 「安心・安全」を証明するための記録として、GAPの中では様々な帳票類の作成を行います。GAPでは、認証取得者が同じ基準で生産工程管理できるよう「共通の管理点と適合基準」を用意しています。下記サイト(※2)から内容を確認できるので、まずは内容を確認してみてください。
※2【管理点と適合基準】

 初回審査では3ヶ月分の記録が必要になるため、お二人も必要項目を埋めて書類の作成に取組みました。必要な掲示物なども準備し、JGAP審査機関に申請を提出する前に指導員立会いのもと自己点検を実施します。自己点検とは、※2で紹介した「共通の管理点と適合基準」に沿って、適合基準をクリアできているかチェックを行い、不適合基準があった場合には、審査日までにその項目を改善していきます。

GAPでの重要項目

 また、GAPの中で最近特に重要視されているのがリスク評価項目です。リスク評価とは、例えば収穫後の生産物が、農薬との交差汚染の可能性、水質汚染、燃料漏洩による資材汚染など食品安全を脅かす、様々なリスクを排除するために、客観的に自分の農場を捉え、評価していくことです。これを実施することにより、より安全な農場設計ができ、その結果、安全な生産物を提供することに繋がっていきます。
 実際にお二人も、リスク評価を実施したことにより、「品質・工程管理に対する意識や視点が変わった」と仰っており、小さな改善点が日々見つかり農場が良くなっていくのを実感できていると語っていました。



前編では、GAP認証取得にかかる初動部分を解説しました。
続きはGAP認証取得までの道のり【穀物編 後編】をご覧ください。
適合基準をクリアするために、お二人がどのような改善を実施したのか改善内容を写真付きで解説していきます。


取材・文・写真:宮部尚樹(JGAP指導員 株式会社オーレンス総合経営)